学習法・記憶法

勉強効果を激減させるアンダーマイニング効果とは

2019年11月21日

勉強効果を激減させるアンダーマイニング効果とは

DaiGo MeNTaLiST

この知識はこんな方におすすめ

  • 勉強を好きになってもらいたい
  • 意欲的に勉強や仕事に取り組んでもらいたい

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アンダーマイニング効果

宿題にはアンダーマイニング効果というものがあります。
これが日本でもよく行われている従来型のドリルをさせるだけというような宿題が、子供にとってのプラスに繋がらないひとつの大きな要素になっているのではないかということが言われています。

アンダーマイニング効果とは、要するに、勉強や学習というものは自分が興味を持って自発的に行なった場合には意味はあるけれど、他人から課せられていやいや行った場合にはあまり意味がないというものですが、宿題を出すよりは、子供達が自分で勉強したいと思うような好奇心を植え付けてあげるとようなことをした方が良いのではないかというのは、皆さんも納得するところかと思います。
先日も紹介しましたが、小学生に関しては宿題にポジティブな効果があるという証拠はなく、中学生になればややあり、高校生になれば多くても2時間以内であれば効果があるということが言われています。
皆さんも、小学生ぐらいの時はあまりはっきりしなくても、中学生や高校生ぐらいになってくると好きな科目とそうでない科目が出てきたのではないでしょうか。僕の場合は物理や数学は面白いなと感じていました。
つまり、自分で勉強したいという感覚が芽生えてきたら、宿題に効果は出るかもしれないけれど、そうでないのであれば、学習に対するモチベーションを低下させてしまうのではないかということが考えられます。宿題を多く課せられて友達とも遊べないし、家でも宿題が原因で親と喧嘩してしまったりネガティブな影響が出てくることも少なくないと思います。
そういった意味で宿題については取り扱い注意だということを言ってきました。

ホームワークとホームタスク

現在の脳科学の流れからすると、そもそも宿題をホームワークとして一括りにまとめるのはおかしいのではないかということが言われています。
つまり、何かしらのミッションをコンプリートするようなホームタスクと、自分が知りたいと思ったことやさらに掘り下げてみたいと思ったことを学ぶための自由研究のようなものを分けて考えるべきではないのかという指摘が多くの方々からもされているわけです。
ですから、それらを一括りにして宿題に効果があるかないかということを考える問題ではないということです。
ただし、従来型の日本でよく行われているようなただドリルをさせるだけというような宿題(ホームタスク)には効果はないということを今回は解説させてもらいます。

日本では多くの場合、学校の先生が生徒全員が宿題のドリルのページを全てやってきたかどうかをチェックしていて、いわゆる課せられたミッションをコンプリートしないと怒られて、コンプリートすると褒められるという状況かと思います。このような賞罰とセットになったホームタスクが多いわけです。

内発的動機と外発的動機

元々人間の欲求とは外発的欲求と内発的欲求に分かれます。外発的欲求とは、外部からのご褒美をもらうためには罰を避けることからモチベーションがやってくるもので、内発的欲求とは、自分の内側から湧いてくる好奇心や興味をベースとしたものです。
このどちらを使うかによって学習効果が変わるのではないかということを今回は考えてみたいと思います。
味気なくて読んでいると眠くなってしまう教科書には興味がなくても、見たことがないような写真や図がたくさん載っている資料集には興味を持った人も少なくはないのではないでしょうか。

脳科学研究というものは、外発的欲求に基づいて行われることが多かったそうです。例えば、褒められたりお金がもらえたりということをもとにして人間のモチベーションや行動をしろとしてきたのが今までの脳科学研究だったそうです。
それとは反対に、例えば、人工知能やディープラーニングなど、人間がどのように学習するのかということを踏まえて機械に学習させるということを行っているジャンルがあります。このような分野で有名なユルゲン・シュミットフーバー氏が筆頭になり、より生産的でよりクリエイティブなものを生み出すためには、賞罰などではなく、自分の喜びや知的好奇心にもっと目を向けるべきではないのかということを2010年の論文からすでに何度も言われていました。

ですから、していかないと怒られるとか、していくと褒められるというような自分の欲求がそこに介在しないような方法では、単純に宿題をするということでは意味があるのかもしれませんが、子供達の未来をよりよくするという意味ではあまり効果がないのではないかと考えられるわけです。

ロチェスター大学のエドワード・デシ教授による研究でも、やはり内発的に動機づけられたタスクに対して外的な報酬を追加するだけで、やる気が欲求が低下してしまうという効果が確認されていて、これをアンダーマイニング効果と呼んでいます
この研究では、子供達に絵を描いてもらう実験を行っています。子供達はほっておいても楽しそうに絵を描くわけですが、その際に子供たちを2つのグループに分けました。

ただ自由に絵を描いてもらったグループ

上手に絵を描くことができたらご褒美をあげると言ったグループ

その後、ご褒美をあげるということがなくなった場合に、どちらの方がより絵を長く描き続けていたかということを調べました。
要するに、子供達はただ楽しく絵を描いているのに、そのままただ楽しく描かせた場合と、もっと絵を描かせようと思いご褒美をあげると言った場合で、どちらの方が効果があるのかということを調べたわけです。

その結果、自分の興味に従ってただ楽しく描いていた子供達はずっと絵を描いていましたが、大人からご褒美をあげると言われた子供達は、ご褒美がなくなると絵を描かなくなってしまいました
自分の内側から出てくる内発的動機というものが、外から与えられる賞罰によって、むしろ、その賞罰が与えられなくなると興味が薄れてしまうということが起きるわけです。

アンダーマイニング効果と脳科学

このアンダーマイニング効果と脳科学の関係性をファンクショナル MRI で調べた2015年の研究があり、自分の興味や内発的動機づけられた課題や勉強をしようとした時には、脳の中の前頭前野外側部という人間の意欲ややる気をコントロールしている部分が、その勉強を始めた瞬間に勝手に反応し、その課題をうまくこなすことができただけで、喜びを感じる報酬系の線条体が反応していました。
つまり、自分が興味を持っていることや好奇心から課題や勉強をしようとしている時には、罰やご褒美がなくても、自然とそれを始めた瞬間からモチベーションが上がっていくわけです。それにより課題をこなせばこなすほど、脳の中で喜びを感じるようになります。 つまりは、これにより勉強すること自体が喜びになっていきます
これを仕事に置き換えるとしたら、仕事をすること自体が喜びになっていくわけですから、そうなると当然最終的には結果もついてきます。このようなポジティブなループの可能性が確認されました。

ところが、外からご褒美や罰を与えることによってアンダーマイニング効果を起こすと、内発的動機が低下してしまいます。つまり、内側から湧いてくるモチベーションが減ってしまうということです。
こうなると、勉強や課題の開始の合図に対して、脳の中の前頭前野外側部や報酬系の線条体もご褒美は罰がなくなった瞬間になくなったということです。
これにより、自分の好きな本や漫画であればいつまでだって読んでいられるのに、教科書は面倒で仕方がないということが起きてしまうわけです。
これは、過去に宿題をしてこないから怒られたとか、宿題をしたら褒められたというような賞罰を間違いなく皆さんは与えられているからです。
そのせいで、人間は本来は興味を持ったことに対して、それが始まるだけで意欲を持ち始め、それをこなしていくだけで喜びを感じて、どんどんプラスのループが起きて勉強が進んでいくはずなのにも関わらず、それが宿題と賞罰によるアンダーマイニング効果によって疎外されてしまったのではないかという可能性が考えられるわけです。

だからといって、宿題をゼロにするべきだということを言っているわけではなく、少なくとも興味を持たせるようにするとか裁量権を持たせるなど、何かしらの工夫をするか、もしくは、宿題の効果に関して賛否両論な状況なのであれば、運動など子供達の未来のためになるということが確認されている他のことにお金や時間や労力というものを使った方がいいのかもしれません。その方が子供も親も学校の先生もいいのではないかということが示唆される研究内容でした。

興味や好奇心による内発的動機を大切に

ちなみに、外からご褒美をもらった時の喜び(外発的報酬)と、自分が興味を持っていることを調べて新しいことを学んだり身につけた時の高揚感(内発的報酬)で、どちらの方が快感として強いのかということも調べられていて、やはり、内発的報酬は外からくる外発的報酬よりも大きいということが示唆されています。
給料やギャラなどの報酬が事前に分かっている時よりも、自分が勉強している中で意外な発見をしたり、過去の経験や学んだことが繋がったことで閃いたような喜びの方が大きいという指摘もあるわけです。

やはり、勉強でも仕事でも同じだとは思いますが、自分から興味を持つ状況にしないとなかなか人間は前に進めないものです。
子供たちに対してはそのあたりを高めることに親も先生も労力を使った方がよく、宿題に労力や手間がかかっているのであれば、その時間と労力をもっと内発的動機づけを高めるような教育に向けた方が良いのではないかと思います。
あるいは、それが難しいのであれば、運動などもっと子供たちのためになるということが確認されていることに時間を使った方がいいのではないかということです。

もちろん、これも何度も言っていますが、宿題に効果があるということを示している研究もあります。かなり低い効果量ではあっても宿題にポジティブな側面があるということが確認はされています。
ですが、一方では日本のデータも含めた上での研究で、Tyler Cowen氏の宿題の平均的な量と学業の間には何のそうかもなかったということも言われています。
こんなにも賛否両論な現状だということです。

おそらく、この点には今回皆さんに紹介したアンダーマイニング効果が深く関わっていると思われます。つまり、内側から湧いてくる好奇心や興味といった内発的動機で宿題をするのか、外から与えられた外発的動機で渋々と宿題をするのか、これによりその効果が全く違ってくると考えられます。

フィンランドではこのあたりも上手に取り入れていて、子供達が自分から何かを調べたいとか、何かをしてみたいと思う時間を大切にするために、従来型の宿題はなくしたり授業の工夫に取り組んで、結果的に学力でも世界トップレベルになっています。
念のために言っておきますが、決して勉強しなくていいということを言っているわけではありません。僕も今でも勉強は大好きですし、皆さんにも勉強も読書も楽しんでもらいたいと思います。
勉強を楽しめるような教育が大事なのではないかということが言いたいわけです。

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リサーチ協力
Yu Suzuki https://ch.nicovideo.jp/paleo
Tatsuya Daikoku Ph.D in Medicine University of Cambridge Department of Psychology https://www.researchgate.net/profile/Tatsuya_Daikoku

本内容は、以下の参考文献を元にした、DaiGoの独断と偏見を含む考察により、科学の面白さを伝えるエンターテイメントです。そのため、これらは、あくまでも一説であり、その真偽を確定するものではありません。
より正確な情報が必要な方は参考文献・関連研究をあたるか、信頼できる専門家に相談することをおすすめします。
訂正や追加情報があれば、随時修正や追記をします。
参考文献:Mollie Galloway, Jerusha Conner & Denise Pope (2013) Nonacademic Effects of Homework in Privileged, High-Performing High Schools, The Journal of Experimental Education, 81:4, 490-510, DOI: 10.1080/00220973.2012.745469
• Total Paper Citation (6 years): 70
Schmidhuber, J. (2010). Formal theory of creativity, fun, and intrinsic motivation (1990-2010). IEEE Transactions on Autonomous Mental Development, 2(3), 230–247.doi: 10.1109/TAMD.2010.2056368
• Total Paper Citation (9 years): 424
Di Domenico SI and Ryan RM (2017) The Emerging Neuroscience of Intrinsic Motivation: A New Frontier in Self-Determination Research. Front. Hum. Neurosci. 11:145. doi: 10.3389/fnhum.2017.00145
• Total Paper Citation (2 years): 71
Deci, E. L. (1971). Effects of externally mediated rewards on intrinsic motivation. Journal of Personality and Social Psychology, 18(1), 105-115.doi:http://dx.doi.org/10.1037/h0030644
• Total Paper Citation (48 years): 5519
Daikoku, T. (2019). Computational models and neural bases of statistical learning in music and language. Physics of Life Reviews. doi: https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S1571064519301411?via%3Dihub
• Total Paper Citation: just published
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1747938X16300628
https://pdfs.semanticscholar.org/527e/698c21e1d853900661043f7f7bb71622971e.pdf
https://marginalrevolution.com/marginalrevolution/2005/06/i_always_hated_.html
Cathy Vatterott(2018)Rethinking Homework: Best Practices That Support Diverse Needs (English Edition)2nd Edition
こちら、バターロットさんの本には、序文にいきなり Since the first edition of this book was published in 2009, much has changed, but the controversy surrounding homework has not abated. Research has still been unable to show proof of homework's benefit. と書いてあるのが面白いです。この本は宿題に関する様々な研究を紹介する決定版的な本ですが、初版からほぼ10年経過し、宿題に関しては様々な研究が出たものの、宿題のメリットはまだ見つかっていない。ということが前提で考察されています。


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