この知識はこんな方におすすめ
- 本番で緊張して力を発揮できない
- ここぞというところでいつも失敗する
本番に弱い人の原因と対策
本番で緊張して力を出せないとか、普段だったらとてもうまくできるのに、本番やここぞという時に力を発揮することができないという人もいると思います。
なぜこのような本番に弱いという現象が起きるのでしょうか。そして、どうすればその本番に弱い自分を変えることができるのでしょうか。
これは原因が分かれば結構簡単に対処できるものでもありますのですが、ほとんどの人はその原因をわからないまま、ただリラックスしようとか手のひらに人と書いて飲むとか緊張汗を抑えようとするのでうまくいきません。
今回は本番に弱い人のその原因と対策について紹介させてもらいます。
緊張を解きほぐすにはどうすればいいのか、緊張を味方に変えるにはどうすればいいのかということについては、今回のおすすめの動画として詳しく解説している動画を紹介していますので、そちらもぜひチェックしてみてください。
極度の緊張でパフォーマンスを発揮できない現象
本番で緊張してしまい本来の力を発揮することができなかったとか、普段だったらもっと上手く喋ることができるのに、いざプレゼンの本番になったら緊張して声が小さくなってしまうなど、普段通りの力をいざという時に発揮することができないということは誰でも経験したことがあると思います。
例えば、ゴルファーでしたら、このパットを沈めたら4,000万円の賞金を手に入れることができるとような瞬間に、なぜか体が動かなくなってしまうというようなイップスという現象もあります。
プロでも極度の緊張によって本来のパフォーマンスを発揮することができないということはあるわけです。
このような極度の緊張により本来のパフォーマンスを発揮することができないということをチョーキングと呼びます。
スポーツでもよく無冠の帝王と呼ばれる選手もいますが、これもおそらくは、実力は素晴らしいものを持っているのに大きな賞金や優勝がかかると本来の実力を発揮することができないことによるのかもしれません。
これはプロのスポーツ選手に限らず皆さんにも起きるものです。
わかりやすい例としては、好きでもなんでもない女の子とはベラベラ喋ることができるし面白い話もできるのに、すごい可愛い女の子が目の前に来ると何を喋っていいのかが分からなくなったりどもってしまうというのもあると思います。
このように、ここぞというタイミングで自分のパフォーマンスを発揮しなくてはいけない時や、自分の力を遺憾なく発揮しなくてはいけない時に、このチョーキングというものが起きてしまい、そのせいで本来のパフォーマンスを発揮することができなくなってしまうというのは誰でもあります。
損失回避レベルとパフォーマンス
今回参考にしているのはこのチョーキングに対してどのように対策すればいいのかということを調べてくれた研究で、カリフォルニア工科大学が36人の男女を対象に、まずは簡単な心理テストを行い全員の損失回避レベルというものを調べています。
この損失回避レベルというものは、損をするの嫌がる度合いです。
チャレンジすればかなり得をする可能性があるけれど、損をする可能性もあるぐらいであったらそれも諦めるというような心理のことを損失回避と言います。
例えば、特に得意も不得意もないようなゲームで買ったら10,000円もらえて負けたら5,000円払うというゲームがあったとします。
勝ったら10,000円得をして負けたら5000円の損で勝敗の可能性は1/2ですから、勝つか負けるかは分からないわけですが自分が得をする可能性の方が高いので、そんなゲームがあったら絶対すると考えることができる人は損失回避レベルが低い人です。
つまり、自分が得をするためであれば多少のリスクであれば取ろうとする人が損失回避レベルが低い人になります。
この損失回避レベルが高い人は、自分が損をすることばかりに注目してしまいます。
自分が勝ったら10,000円もらえるということは関係がなく、負けた時に5,000円損してしまうということばかりに注目してしまうのが損失回避レベルが高い人です。
このような質問がたくさん並んでいて、その人がどれぐらい損をすることを嫌うのかということを調べるのが損失回避レベルのテストです。
先行研究を見ると、本番で実力を発揮することができない人の特徴としては損を嫌うことだということが確認されていました。
損失回避レベルが高い人ほど本番で力を発揮することができないということがわかっていたわけです。
損失回避レベルが高いと緊張で力を発揮しにくくなる
つまり、本番で実力を発揮することができない人は、自分が勝つことや成功することよりも、負けないとか失敗しないということに対してモチベーションを持っています。
例えば、プレゼンをする場合であれば、このプレゼンを成功させてこの大きな契約を絶対に取ると考えている人は上手にプレゼンすることができますが、失敗すると部長に怒られるかもしれないし絶対にミスは許されないと考えている人は実力を発揮することができにくくなります。
行動の先に成功や成果を見るのではなく失敗や自分が損をすることを見てしまい、勝つよりも負けないように、成功するよりも失敗しないようにすることを優先してしまうと、本番で本来の力を発揮することができにくくなるということが分かっていました。
失敗を恐れることにより積極的な行動をとることができなくなってしまうわけです。
実際に、脳をスキャンしながらこの損失回避レベルについて調べてみると、損失回避レベルが高い人は、脳の中にある線条体と呼ばれる体の動きをコントロールするエリアが停止しやすくなるということも確認されています。
つまり、損をするのが怖いとか失敗するのが怖いと考えてしまうと体が動かなくなってしまうので、パターを触れなくなったり体が思うように動かなくなるというレベルの問題まで起きるわけです。
あるアドバイスをするだけでパフォーマンスが高くなった?!
このように先行研究でも本番に弱い人の特徴としては損失回避レベルが高いということが分かっていましたので、このカリフォルニア工科大学の実験では参加者の損失回避レベルをまずチェックしたわけです。
その上で参加者に対して、勝ったら50ドルもらえて負けたら50ドル取られるというルールのゲームを行ってもらいました。
ここでもやはり損失回避レベルの高い人ほど損をすることを恐れるのでパフォーマンスを発揮しにくくなるということが考えられます。
参加者は2つのグループに分けていて、この買ったら50ドルもらえるて負けたら50ドル取られるというゲームを普通に行ってもらったグループと、もうひとつのグループには、少し変わったアドバイスをしました。
そのアドバイスとは、「あなたはすでに50ドル持っていると想像してみてください。これから行うゲームは、その50ドルが奪われるか、それともそのままキープすることができるかというゲームです。」と伝えました。
つまり、損失回避レベルの高い人に対して、ただ勝ったら50ドルもらえて負けたら50ドル取られると伝えるのではなく、すでに50ドル持っていると想像してもらい、万が一負けたとしてもそれを奪われるだけなので、自分の今の状況をキープすることができるかどうかというゲームだと伝えたわけです。
現状維持の視点で再解釈
現状維持の観点から物事を見直しています。
自分が勝つか負けるかということではなく、現状を維持することができるのか、それともラッキーで得をするのかという視点で物事を見れるように考え方を少し変えています。
このように現状維持の文脈に変えるということを行うだけで、実際に3割ぐらいパフォーマンスが良くなったということが確認されています。
ただ考え方を変えるだけで、3割も緊張して実力は発揮できなくなってしまう可能性を下げられたということです。
この実験では、参加者たちのストレスの度合いを測るために皮膚反応もチェックしています。
自分の物事に対する考え方を変えることをリアプレイザルと言いますが、このリアプレイザルのテクニックを使うとストレスのレベルもかなり下がっていたということも分かっています。
ですから、この知識を皆さんが使うとしたら、プレゼンの場面であれば自分の企画はすでに通っているものと考えてください。
既に通っているその企画がそのまま維持して進めることができるのか、一旦中断になり始まる前に戻ることを判断するプレゼンだと考えればいいと思います。
大切なテストや資格試験などがある場合であれば、自分はその試験にすでにパスしていて、この試験は自分が既に持っているその資格をキープすることができるかどうかということを調べるためのテストだと考えてください。
スポーツや大事な試合の場合であれば、自分は既にその試合で勝利をしていて、これから先は全て勝ち点を維持するための防衛戦だと考えてください。
このように少し考え方を変えてリアプレイザルするだけで、本番に実力を発揮することができないチョーキングの影響をおよそ30%ほど減らすことができるかもしれないということを今回の研究は示してくれています。
本当に考え方を変えるだけでパフォーマンスが発揮できない状況を回避することができますので、これはぜひ試していただけたらと思います。
別に緊張しやすいわけではないという人も効果があります
実は、僕もテレビによく出ていたころによくこれを使っていました。
テレビに出始めた頃には、絶対に失敗はできないと思っていましたし、失敗したら二度とテレビには呼ばれないと考えていました。
笑っていいともという番組の生放送に出ていた時にかなり大きな失敗をしました。
テレビは編集もありますし完璧なものしか放送しないので、逆に、僕が生放送で失敗したことによって話題になり視聴率が上がりました。
そのおかげでそれ以降は僕は失敗もするキャラとして認識されました。
実際にはテレビでは編集などもあるので失敗したところをカットされているだけということもありますが、僕は失敗する場合もあるというキャラになりました。
それは最初の大きな生放送の大失敗のおかげでもあります。
そうなると考え方が変わりました。
パフォーマンスを絶対に成功させないといけないとか、成功させなければもう二度と呼ばれないというような考え方がなくなり、心理戦でもし負ければ話題になり視聴率も上がるわけですし、逆に勝てば勝ったですごいと言われるわけです。
どちらになってもいいと考えられるようになりました。
自分は目の前の勝負に勝って栄光を手に入れなくてはいけないとか、もし失敗したら終わりそういうことではなく、僕の場合は、どちらにしても盛り上がるわけなので、成功して買ったらラッキーだし失敗しても別に今の立場が変わるわけでもないから結果はどちらでもいいのではないかと考えられるようになったわけです。
そう考えられるようになると本番にとても強くなります。実際に失敗する確率も減りました。
あまり本番に弱いわけでもないし緊張しないというタイプの人も、実際には気づかないうちにチョーキングの影響が起きている可能性もありますので、ぜひ試してみてもらえたらと思います。
現状維持の文脈で考え直してみるというのが良い方法です。
特に損失回避の傾向がある方は試してもらいたいと思います。
もっと本番に強い自分になるためのおすすめ
今回のおすすめの動画としては、さらにもっと本番に強い自分に変わりたいという方のためにおすすめの動画を紹介しておきます。
今回紹介したテクニックの他にもできることはたくさんありますので、ぜひこちらの動画もチェックしてみてください。
こちらの動画は緊張に負けないメンタルを作るための方法をスポーツにまつわる心理学の研究から解説した内容になっています。
使いやすく解説していますのでこちらもぜひ参考にしていただけたらと思います。
能力や力を発揮するためのおすすめ本
今回のおすすめの本としては2冊紹介しておきます。
緊張以外でも、普段から仕事にやる気が出ないとかパフォーマンスが下がってしまう現象があり、それは慢性的なストレスです。
ストレスというものは人間の IQ まで下げてしまうということが分かっています。
ですから、緊張対策と同時にストレス対策も行なっておけば、自分の能力が無駄に下がってしまう可能性をかなり減らすことができます。
そのために、僕がストレス対策の本として一番おすすめできるのがこちらの本です。
今回紹介した損失回避など、人間の頭の中にある厄介な性質やバイアスというものに対して対策したいのであれば、こちらの本がとてもおすすめです。
ノーベル経済学賞を受賞したダニエル・カーネマンさんの本ですが、人間の意思決定やバイアスや思い込みに関しての事実をほぼ全て網羅していると言っても過言ではないぐらいの素晴らしい本です。
自分の厄介な心の揺らぎや迷いなどをコントロールするためにも使えますし、逆に、そのような人間の心の迷いやすさとか性質を理解して相手をコントロールするためにも使うことができる本です。
さらに、おすすめの本として僕の無料のオーディオブックのリンクも入れておきます。
通常は3000円ぐらいするものですが、これを無料で聴けるというAmazon のキャンペーンを行っています。
1人1冊だけですが、まだの方はぜひチェックしてみてください。
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リサーチ協力の鈴木祐さんの論文解説チャンネルもオススメです
Supported by Yu Suzuki https://ch.nicovideo.jp/paleo
本内容は、参考資料および、動画を元に考察したもので、あくまで一説であり、真偽を確定するものではありません。
参考:https://www.researchgate.net/publication/329247452_Reappraisal_of_Incentives_Ameliorates_Choking_Under_Pressure_and_Is_Correlated_with_Changes_in_the_Neural_Representations_of_Incentives