学習法・記憶法 目標・成功

努力や練習が報われない理由と【唯一の科学的に正しい努力の方法】

この記事はこんな方におすすめ

  • 音楽・スポーツなど特定のジャンルでトップになりたい
  • 誰よりも効率よくスキルを身に付けたい
  • 子どもに成功してほしい

1万時間の法則は正しいのか?

1万時間の法則については聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。
1万時間の法則というのは、マルコム・グラッドウェル氏の本で有名になりましたが、元々は1993年に出されたアンダース・エリクソン氏の研究によるものです。これにより、例えば、歌手としての一流、ピアニストとしての一流、トレーダーとしての一流など、どんなものでも何かのジャンルのエキスパートになるためには、大体1万時間ぐらいはトップの人たちが練習しているので、1万時間練習すれば自分のなりたいジャンルのエキスパートになれるのではないかと考えられたものです。

これはとてもわかりやすい指標ですし、希望も持てるわけです。自分も頑張って1万時間練習すればきっと一流になれるという希望を持てます。それにより一躍広まったわけです。
本などでも紹介されとても有名になりましたが、最近の研究によると、ほぼ完全に覆っているということができます。

切ない話ですが、どんなに練習しても一流になれる人とそうでない人がいるわけです。ということは、自分に合うジャンルを探すことが本来は一番いいということができるわけです。
さらに、天才はそれぐらい練習しているのかということを調べると、悲しいことに凡人よりも天才たちの方が練習時間が少ないということも分かっています。

つまり、何かのジャンルで一流になりたいのであれば、ただ1万時間練習すればいいということではなく、なれる人となれない人、それぞれの練習量にはかなりの差があるということです。しかも、天才と言われる人ほど練習時間は少なくてすんでいるということです。
ですから、他人よりも少ない練習時間で自分が身につけることができることに力を入れた方が、その特定のジャンルでは成功する可能性が高くなると言えるわけです。

練習量が才能やスキルに与える影響とは

では、どうすればトップになることができるのかということを解説していきます。

練習がどれぐらい大事なのかということについてはいろいろと調べられていますが、練習がその人の才能を説明できる割合はおよそ3割だと言われています。
ですから、一生懸命練習しても、その練習が皆さんの将来の成功に寄与する確率は3割ぐらいしかないわけです。これは別に練習しても意味がないということではないですが、研究としてはそのようなことが確認されているわけです。
2014年のメタ分析によると、練習量によってその人の才能を決めることはそんなにないということが確認されたというかなりシュールな話です。

一応言っておきますが、1万時間の法則を信じて闇雲に練習が大切だという人もいますが、元々の1993年の論文でも、練習の重要性としてはその人の成功の48%を決めているとされていました。
ですから、もちろん練習は大事なわけですが、どちらにしてもそれだけではなかったということです。
その後行われた研究によって、徐々にその練習が才能に寄与する割合が減っていき、現状としては2割から3割とされています。

1万時間の法則の実験を再現し追試したところ

最近行われた研究で、元々の93年の研究で行われた実験を再現していたというものがあります。

それによると、同じ条件で再現してみたけれど、同じ結果を確認することができなかったということです。
元の論文では、レベルの高いバイオリニストとそうでないバイオリニストを比べて、レベルの高いバイオリニストは一生懸命集中的に練習を行い、その練習時間を1万時間の法則に沿っているぐらいのレベルだったということでしたが、それを追試したところ、トップレベルのバイオリニストは、標準的なレベルのバイオリニストに比べて練習量が少なかったということです。
これはケース・ウェスタン・リザーブ大学の研究で、実際にバイオリニストを集めてそれぞれのスキルごとに分けた上で、それぞれの練習量を調べスキルとの比較を行ったものです。

これは93年の実験と全く同じ方法をしているので、実験の方法自体もゆるい感じもするかもしれませんが、この研究の方法ではバイアスがかかるのではないかということが考えられます。

つまり、バイオリニストたちのスキルのレベルによって最初に区別し、その上でインタビューして練習時間を確認しているので、インタビュー側もその人がトップレベルのバイオリニストだということを理解した上でインタビューを行います。質問される側もそれを意識して答えるようになるので、そのようなバイアスがかかってしまったのではないかということです。

研究者達が事前にそのスキルを知っていてはだめなのではないかということに注目したのが、ケース・ウェスタン・リザーブ大学のこの研究です。
実際にこの問題を正しく調整し、それぞれのバイオリニストのレベルが分からない状態で研究者がインタビューを行い判断したらどうなるのかということを調べたわけです。

その結果、当初の研究では、練習量がその才能を説明できる確率は48%でしたが、実際には26%しか説明できなかったということです。

つまり、バイオリニストに限らずトップレベルの人たちは、なぜか練習量が少ないということです。練習量が少なくても成功できる才能を持っているけれど、練習をするからこそ成功するということももちろんあると思いますが、それでもやはり、比較的練習量が少ないということが言えるわけです。

もちろん練習も努力も大切ですが・・・

ですから、練習や努力を誰でもただすれば、それは決して自分を裏切らないのかと言うとそんなことはないわけです。

何度も言いますがもちろん練習は大事ですし、練習したほうがもちろん力は向上しますが、そのジャンルのことに例えば10時間を費やすのであれば、他の色々なことにもチャレンジしてみて、他の人が10時間の練習が必要なところを自分は2時間で形にすることができるようなジャンルを見つけた方が成功する可能性は高いのではないかということです。

別の研究で2010年のプリンストン大学の研究によると、練習の重要性はジャンルによっても変わってくるということが分かっています。
例えば、ゲームで上達したいというのであれば、その練習が皆さんのスキルを左右する確率はおよそ26%とされています。
音楽ではもっと少なくて、21%程度しか影響しないということです。

そして、勉強に関しては、わずか4%だということです。
勉強は、後ほど説明しますが、生まれ持っての IQ やそれ以外の才能が寄与しているところが大きいわけです。

要するに、ただただ愚直に練習すればいいということにはならないということです。
もっと厳しいのは専門職です。専門職となると技術が全てですから練習が特に大切な気がしますが、実際にはわずか1%だけだったということです。

繰り返しますが、練習が必要ないということではなく、練習だけでは決まらず他にも大切な部分があるので、むやみやたらに練習や努力をすれば必ず成功できるとは考えない方がいいということです。

単純に練習量だけでその人のスキルを図ることができるというのであれば、どのようなジャンルであっても練習量の多い人が必ずトップレベルにいるはずです。ところが、実際には誰にも負けないぐらいの時間を費やして練習している人もいれば、そうでない人もいるわけです。つまり、個人のスキルの違いというものは20時間だけでは判別することができないということです。

では、成功のために大切なのは?

研究者達は、なぜこのような天才と言われる人たちが生まれるのかということも調べています。ずっと同じジャンルで続けた結果成功する人もいれば、色々なことに挑戦して成功するという人もいますが、このような天才が生まれる理由ははっきりとは分かっていません。

ところが、そのような中でも重要ではないかとされているのが、スキルを学び始める年齢です。
例えば、言語やスポーツであれば、どうしても年齢の壁が出てきます。何歳ぐらいまでに始めていない人発音が身につかないとか、スポーツ選手であれば肉体的なピークがきている時期にパフォーマンスを発揮できるようにする方がいいとか、このような制限があるものに関しては、それをいつ始めるのかということが重要になってくるということです。

ですが、それ以外に関してはワーキングメモリーを鍛えるほうが大事なのではないかと言われています。
ワーキングメモリーとは短期記憶能力のことで、短時間みなさんの脳の中に情報を留めておくもので、このワーキングメモリーの能力が高いと集中力も自己コントロール能力も高く、コツコツと目の前のこともこなすことができるようになるし、仕事や勉強がはかどり、感情のコントロールや記憶力も上がるとされています。
ある意味、人生の成功につながっているあらゆる能力が、このワーキングメモリーによるものです。

このワーキングメモリーは、鍛えることができる能力です。
ですから、人間の成功を決めるのは生まれ持った知能や IQ もありますが、それだけではなく、それに合わせてワーキングメモリーが重要になるということです。
ということは、このワーキングメモリーを鍛えることが、ただただ闇雲に長い時間練習するよりも大切なのではないかと考えることができます。

実際に、様々な研究においても、このワーキングメモリーを鍛えれば新しいことに取り組む際もそれを身につけるスピードも速くなり、結果として練習時間も少なくて済むということが分かっています。
誰でも、少ない練習時間で同じスキルを身につけることができるのであれば、それに越したことはないはずです。

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リサーチ協力:Yu Suzuki http://www.nicovideo.jp/paleo

参照:https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0160289614000087
https://journals.sagepub.com/doi/abs/10.1177/0956797614535810
https://www.researchgate.net/publication/335312255_The_role_of_deliberate_practice_in_expert_performance_revisiting_Ericsson_Krampe_Tesch-Romer_1993

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