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宿題は10分以上やってはいけない【10分ルール】とは

この知識はこんな方におすすめ

  • 子供の宿題について気になる親御さん
  • 宿題に苦労している学校の先生
  • 子供の将来を考える全ての人

宿題無意味説

先日、小学生に宿題が効果的だという証拠はなく、中学生にはあまり効果はないかもしれないけれどあるかもぐらい、高校生は効果はあるけれど条件付きというような話を紹介させてもらいました。

最近リサーチを引き受けてもらうことになったケンブリッジ大学の研究者の方とディスカッションをしつつリサーチもしてもらいました。興味深い論文がいくつかありましたので、それを元に解説しつつ考察もさせていただけたらと思います。

今回はお子さんがいる方はもちろんですが、僕もそうでしたが、子供の頃にあまり宿題をするタイプではなかったという人にも参考にしていただけたらと思う内容です。
例えば、宿題はあまり好きではなかったけれど、図鑑を見るのは好きだったとか、教科書はあまり見る気にはなれなかったけど、写真や図がいっぱい載っている資料集を見るのは好きだったという人もいると思います。このような方も自分はあまり宿題を真面目にしなかったからダメなんだと考えてしまい人生を無駄にしてほしくないとも思います。

宿題の適切な量とは?!

先日紹介したデューク大学のクーパー教授による研究からですが、先日紹介した論文によると、クーパー教授は、小学生には宿題をさせることに意味があるという証拠はなく、中学生には意味はあるかもしれないぐらいで、高校生であれば意味はあるというようなことを言われていました。
では、具体的にどれぐらいの宿題をするのが適量なのでしょうか。このような点を紐解いていくと、やはり今の日本の宿題の与え方は意味がない、むしろ逆効果なのではないかということも見えてきます。

もちろん、宿題にもいろいろな方法があります。
例えば、自分がやりたいと思うような内発的動機を促すような宿題もあれば、周りから強制的にやらされる外発的動機がある宿題もあり、これによっても当然効果は変わってくるはずです。
いわゆる海外で言われるホームワークが、日本の場合はホームワークではなくホームタスクになっているのではないか、だからあまり効果が出ないのではないかというような議論もできればと考えています。

このクーパー教授が推奨している低学年の宿題は一晩に10分から20分が限度だということです。学校から帰ってきてする宿題は10分から20分ぐらいにとどめておいた方がいいということです。グレードが上がるたびに10分追加して行くぐらいがいいそうです。
ですから、小学校1年生であれば10分、2年生になったら20分・・・というように、様子を見ながら徐々に増やしていくのがいいのではないかということを言われています。

元々このようなグレードが上がるたびに10分追加していく方法が良いのではないかという考え方は、色々な所で使われていて、例えば、NEA(National Education Association)やNPTA(National Parent Teacher Association)でも推奨されていて、一般的に10分ルールと呼ばれているそうです。

確かに、宿題自体をやる意味があるかどうかを別にして、勉強でもどんなことでも結構ですが、何か一つの事を毎日10分やる習慣を身につけると自己コントロール能力を身に付けることにつながるという研究はいくつもあります。
ですから、もし皆さんも何も決まった習慣がないというのであれば、いつも決まった時間に10分間だけ筋トレとかでも結構ですのでするようにして、習慣を重ねていくことで感情のコントロールなども上手くなります。
このようなことと同じような効果が期待できるのかもしれません。

NEA(National Education Association)やNPTA(National Parent Teacher Association)によると、中学生以上ぐらいになってくると、宿題にいわゆる学習効果というものが期待できます。例えば、自分で何かを調べたりするスキルであったり、勉強の習慣自体が身につくという点では効果はあるだろうとされています。ですが、小学生などになると宿題のそのような効果は期待できません。
しかも、このような教育に関する問題には答えが明確に出ないものも多く、賛否両論になっている状況です。
例えば、前述したような学習習慣が身につくという点で宿題は意味があるという人もいれば、NEA(National Education Association)やNPTA(National Parent Teacher Association)による発表によると、宿題というものが学校と家との大きな摩擦の原因になってしまうということも言われています。子供が宿題をしてこないことが原因で親と学校とで摩擦が生まれたり、実際にはなかなか子供が自分で宿題ができず親が代わりにしているような状況もあるようです。
そのような様々な負担を増やしたり大きな摩擦の原因になることもあるので、親や学校の先生によるかなり綿密な宿題設定や計画があった上でのポジティブな効果だということがクーパー教授の2007年の論文でも言われています。
ですから、そのようなさまざまな負担を考慮しつつ綿密に計画を立て時間も調整した上でないと宿題のポジティブな効果はないということです。
日本の学校でよく行われているようなただ宿題を全員に同じように与えるだけとか、ドリルを渡してそれをしてくるように言うだけというように、ただ与えるだけでは意味がないということです。
僕は宿題意味ない説を説いていますが、それは今の宿題の与え方では意味がないので、それを無理にさせるぐらいであれば、無くして他のもっと子供の将来のために繋がることをさせるとか、あるいは、効果につなげるための調整ができる人はそれをした方が良いのではないかということを言っているわけです。

他にも、1100人の親を対象にした研究があり、子供の勉強時間を親が見積もった上での調査ですが、先ほどの10分ルールで推奨された量の約3倍もの宿題を子供達は課せられているそうです。
特にいわゆる初等教育レベルでは10分ぐらいがいいと推奨されているにも関わらず、毎晩平均で28分も宿題をさせられていたということです。さらに、幼稚園児にすら宿題が課せられていたそうで、宿題による効果が全くないにも関わらず平均で25分もさせられていたということです。
現状、子供たちがさせられている、あるいは僕たちがさせられてきたようなドリルをたださせられるだけのような宿題はネガティブな効果の方が大きくなってしまうということです。

宿題の問題については賛否両論な状況だからこそ

前述したように宿題の問題については賛否両論があります。
宿題の効果があるということを言われている論文を紹介しておくと、例えば、2017年のメタ分析では効果量としてはd=0.229ぐらいですので、かなり低めではありますが、一応意味はあるのではないかということが考えられます。
他の2017年のメタ分析でも、効果があるということを示唆している研究もあります。
このように賛否両論なのが現状なわけです。
重ね重ね言っていますが、このような賛否両論な状況なのであれば、例えば、運動のようなみんなが認めていて効果があるということが確認されていることに子供達の時間を使うようにしたほうが子供達の将来のためになるのではないかということです。
今のところ効果があるかないか分からないことに時間を使うよりは、より効果に対する信憑性があることに時間を使った方がいいのではないかと思います。そういう意味で宿題に意味がないと言っているわけです。

このような研究結果の話をすると、あくまで海外の研究なので日本には当てはまらないのではないかということを言う人がいますが、日本のデータも含めた上で指摘している文献もあり、Tyler Cowen氏の指摘も興味深いです。
これによると、日本のデータも含めた上で、宿題の平均的な量と学業成績の間には何の相関も見出すことができなかったということを言われています。
つまり、たくさん宿題を出したところで子供達の成績が良くなるわけでもないから、あまり意味がないのではないかということを示唆しているわけです。
こんなにも賛否両論なわけですから、わざわざ子供達や学校の先生、親御さん達に大きな負担をかけてまでさせる意味はないのではないかということです。

間違いはないでいただきたいですが、これは決して勉強しなくていいと言っているわけではありません。もちろん勉強は僕も好きですし、しっかりしたほうがいいですが、今の宿題以外にもできることがあるのではないかということを言っています。
宿題を前提にするよりは、学校にいる間の集中力を高めるためにも午前中は子供達が体を動かす時間を増やすとか、そんな方向に工夫したほうがいいのではないかということです。

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リサーチ協力
Yu Suzuki https://ch.nicovideo.jp/paleo
Tatsuya Daikoku Ph.D in Medicine University of Cambridge Department of Psychology https://www.researchgate.net/profile/Tatsuya_Daikoku

本内容は、以下の参考文献を元にした、DaiGoの独断と偏見を含む考察により、科学の面白さを伝えるエンターテイメントです。そのため、これらは、あくまでも一説であり、その真偽を確定するものではありません。
より正確な情報が必要な方は参考文献・関連研究をあたるか、信頼できる専門家に相談することをおすすめします。
訂正や追加情報があれば、随時修正や追記をします。
参考文献: Cooper, H., Robinson, J. C., & Patall, E. A. (2006). Does Homework Improve Academic Achievement? A Synthesis of Research, 1987–2003. Review of Educational Research, 76(1), 1–62.
https://journals.sagepub.com/doi/10.3102/00346543076001001
Cooper, H. (2007). The battle over homework: Common ground for administrators, teachers, and parents (3rd ed.). Thousand Oaks, CA, US: Corwin Press.
http://sk.sagepub.com/books/the-battle-over-homework
https://pdfs.semanticscholar.org/527e/698c21e1d853900661043f7f7bb71622971e.pdf
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1747938X16300628
https://marginalrevolution.com/marginalrevolution/2005/06/i_always_hated_.html

Cathy Vatterott(2018)Rethinking Homework: Best Practices That Support Diverse Needs (English Edition)2nd Edition
こちら、バターロットさんの本には、序文にいきなり Since the first edition of this book was published in 2009, much has changed, but the controversy surrounding homework has not abated. Research has still been unable to show proof of homework's benefit. と書いてあるのが面白いです。この本は宿題に関する様々な研究を紹介する決定版的な本ですが、初版からほぼ10年経過し、宿題に関しては様々な研究が出たものの、宿題のメリットはまだ見つかっていない。ということが前提で考察されています。

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